拙僧が愛する2021年有馬記念

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役者、実況(正+割り込み)、ファン、時代、すべてがそろった数え役満の年末総決算グランプリ

金色の血より錬成されたそのサラブレッドは望まれ、大いに期待されて世の光を受けた。

はずだった。

しかし、母馬の外に出て先ず彼女に向けられたのは失望のまなざしだった。

小さすぎる。

競争に使えない。

真剣勝負の世界においては、冷たい視線に容赦はない。

乳飲み子の無垢な身体に刺さる。

生まれてすぐ、残酷にもそういう目を向けられたのだ。

調教はしてもらえた。

彼女は頑張って、頑張って、氷の視線に耐えてひたすら努力を重ね、レースに出してもらえることになった。

ただし、まったく期待はされていない。

実際、彼女は勝てずに敗北を重ねた。

同じ斤量を背負って、限られたパワーでは終盤にどうしても切れ味にかけ置いて行かれる。

負け続けた10戦目、阪神右回り2400。

ついに彼女は勝利し、菊の舞台に立てることになった。

初勝利の動画を繰り返し見る父‐森田先生。

目じりには温かい涙。

父の目だけは彼女にずっと暖かかった。

まったく期待されてない、牡馬に交じっての菊。

彼女は先頭に詰め寄り、5着と好走する。

3000メートル走って、牡馬を敵に回して、5位。

そう、彼女には血反吐く努力に裏打ちされたスタミナがあった。

長い距離。

周りがバテて脱落していくなか、彼女だけは小さすぎる体に対する斤量にあえぎながらも、根性で足を緩めない。

固有スキルにするならば、終盤8分の2からゴールまで、0.15前に出続けるといったところか、皮肉にも逆境への反骨が彼女に与えたスキルだ。

なお右回りの鬼でもある。

彼女は血のにじむような努力で自分の居場所を勝ち取ったのだ。

翌年、弟タイトルホルダーが菊花賞を勝ち、世代最強の一角に名乗りを上げる。

続く翌週、彼女は弟と同じコース、自身も1年前に挑戦したコースにいた。

珍しく入れ込んでいる。

弟の活躍が彼女の金色の血を煮えたぎらせた。

無様な走りはできない。

ゲートが開くと、前目3~4番手につける。

さすがにスタミナが持たない。

誰もが彼女の失策を疑い、敗北を予感した。

だが彼女には策があった。

菊で5位に食い込んだ手ごたえ。

前方でレースを進めるのは確かにきついが、もし、堪え切れたとしたら?

菊で埋められなかった1位までの差を吸収できるかもしれない。

はたして終盤、阪神競馬場は揺れていた。

彼女が2位からじりじりと1位との差を詰めていく。

目算で、彼女が苦しみに耐え抜けば届く。

誰もがキセキを期待した。

重賞でも何でもないレース、G1も尻尾をまく大歓声。

彼女の戦意を支えきった。

ゴール後、彼女の下あごは激しく震え、唾液は垂れたほか吐き出された。

これで4勝、オープン馬。

彼女は努力のみで、己の体には間違いなく金色の血が流れていることを証明した。

その年の総決算、年末のグランプリ有馬記念。

姉弟は難コース中山のパドックをそろって闊歩していた。

パワーを要求される中山、彼女に勝ち筋はなかった。

クロノジェネシスの馬体が、すこしうらやましい。

だが、彼女は姉弟そろってグランプリを走りたかった。

我々レーンちゃんずの言いたいことをすべて語ってくれる、ニコ動いらずの岡安実況。

胸に来るものが多々ある。

我々のアイドルが、有馬の舞台に居る。

タイトルホルダーと同じフレーム内にいる。

絶好の4枠、道中は中段内側を陣取れ、外側からF4ことエフフォーリアがエスコート。
F4こと、エスコート。

これなら4コーナーまで千切れずについていけそうだ。

そしてパンサラッサもいい仕事をしてくれた。

彼はレースを盛り上げることにかけては並ぶ者がいないエンターテイナー。

大方の予想通り先頭に立ち、蓋。

タイトルホルダーは2番手に控え、パンサラッサのペースも絶妙だったことから、2番手以降抑え込まれて詰まり、何度も姉弟が同じフレームに入ってくる。

彼女はさすがに勝ち目がないので、弟の勝利を信じてエールを送る。

岡安実況に聞きほれているところ、青島さんがやかましい。

弟は5位に沈んだ。

それでも姉は誇らしかったが、弟の気持ちを察し、姉はどのように慰めようかと思案していた。

弟は姉に勝利を誓い、翌年の日経賞、天皇賞、夏のグランプリを負けなしで走り切った。

8歳で彼女が現役引退するとき、寂しいという気持ちより、我々の小さなアイドルが無事に走り終えられることに胸をなでおろした。

君が証明した金色の血をつないでください。

勇気をありがとう、メロディーレーン。

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